損するギバーがなくすもの【89】

三社目の仕事

とあるメーカーのインハウスデザイナーとして入社した三社目。
これまでは画面上でいわゆる『印刷物』に『平面的』なデザインをしてきたわけですが、立体物となると勝手が違いました。画面上でどんなによく見えても、実際手に取る形となるとイマイチ…という事が発生するのです。

また、自社で扱ったものは後日『お客様の別注』として生産する場合がほとんどでした。故に製品の特性や生産工程に至るまで、全てを把握して置く必要があり、これは一・二社目とは明らかに違う業務内容でした。

大変な事は何？

そんな三社目でしたが、一・二社目の経験を発揮できる場面もあり、商品のデザインにプラスして、製品カタログやPOP、WEBページ制作なども行うようになっていきました。
この経歴を説明するとSさんから

との質問が。改めて考えてみると、私の苦労話はほとんど社内の人間関係、特に社長に関わる事でした。

３社目の社長はどちらかというと大人しく寡黙で、パワハラタイプとは真逆でしたが気を許した人以外ほとんど話をしない人でした。

問題だったのは、その性格が仕事にも出ていて、自分に好意的な人にばかり大事な仕事をさせてしまう事でした。

こうなると『除外された人』は非協力的になってしまい、積極的に商品を売り込まなくなる。すると社長は黙ってしまい、また彼らを避ける…と言う地獄のスパイラルが生まれており、この状況で商品開発をしていく事が非常に苦痛でした。まあ…どこの会社でも似たような事はあると思いますけどね（涙）

否定はしない

そんな中、ゆきみちは社長が作った商品を全面的にやり直し、会社の看板商品へと生まれ変わらせた事があります。

するとSさんからとある質問が飛びました

言われてみれば人の言うことにすぐNoという社長で、それに苦しめられ、彼を嫌う社員はたくさんいました。
でも私はあまり反対された事がありませんでした。社長に気を使ってイエスマンをしていた…ということではなく、むしろ思った事ははっきり言っていました。

ただ、必ずしていた事がありました。それは

経緯を聞く

という事です。デザインの話だけではありませんが、物事には必ず経緯があります。特にデザインにおける成果物は「目ではっきりと形が見える」が故に、良し悪しを見つけやすいものです。

でも大切なのは、それをこれみよがしに指摘するのではなく、本来希望の着地点はどこだったのかを明確にし、共有する事だと思っていました。売れなかった事は事実だとして…商品やデザインにどんな未来を描いていたのか。
経緯を聞き、生かせるものは生かし捨てるものは捨てる、それを一緒に考えるというスタンスをとっていました。

すると大抵は

わかったそれでいってみよう

と言われる事が多かったです。

その話をするとSさんから

と指摘されます。さてこれは一体何の力だったのか…？


続く